【週刊ハンガンネット通信】第512号 (2024年11月25日発行)
「K-POPを使った教材」
ペ・ジョンリョル
====================================
今年末のNHK紅白歌合戦の出場者が発表されましたが、K-POPからは、TOMORROW X TOGETHER(TXT)とILLIT、TWICE、LE SSERAFIMが選ばれました。
案の定、ネットには「誰?」「韓国人ばかり」「韓国推しの紅白が招いた“お茶の間”の分断」などという見出しが見受けられます。単に若年層の視聴者を念頭に、その人たちに人気のあるアーティストを選んだだけでしょうし、見るメディアが多様な時代にあって、分断もなにもないと思うのですが…。
私はなんとかすべてのグループ名を字面で知っているくらいですが、若い世代を中心にこれだけK-POPの人気があるなら、商売人としてはなんとかこの人気に便乗しなければと思ったりします。
前々回の加藤さんに続いて、私も歌の話をしたいと思います。
HANAからは、過去に以下の『K-POPで韓国語! 2017-2018』をはじめ『KPOPで韓国語!』というシリーズを計5冊出しました。担当はもちろん私ではありません。
https://www.amazon.co.jp/dp/4295402435/
K-POPの人気曲の歌詞に発音や文法、語彙の説明を付けて、対訳とともに掲載した本です。オンライン書店のレビューでは「知りたい文法事項がたくさん載っていて利用価値が非常に高い」といった評価も頂いています。
このシリーズは素材(歌詞)ありきで編集制作のフォーマットもできているので、作るのは至って楽なのですが、歌詞の使用許可を取るのがなかなか面倒でした。もっとも最近では、韓国の著作権管理団体KOMCAと日本の著作権管理団体JASRACとの提携が進み、データベースも整理されているようなので以前に比べると手続きがだいぶ楽になっているはずです。
これまでに出した5冊では、歌詞を掲載するだけで歌をすぐ聴ける仕組みを加えられなかったのですが、最近ほとんどすべての曲の公式動画がyoutube上にあり、スマホとQRコードが普及したので、今後はそのサイトへのリンクを埋めこんだQRコードを誌面に載せて、スマホから動画に直行して歌を聴いてもらうことが可能です。
語学書ではなく解説書ですが、野間秀樹先生が出版された『KPOP原論』(ハザ刊)がまさにこのスタイルを取っています。さらに今年9月に出版された同書の韓国語版『K-POP 원론』(연립서가刊)にいたっては、なんと400ものQRコードが紙面に掲載されており、動画も併せ見ることで本の内容を立体的に理解できるようになっています。
https://product.kyobobook.co.kr/detail/S000214379140
韓国語版ではさらなる増補改訂が行われており、アーティスト名索引やおすすめ動画リストが充実しています。私のようにK-POPに明るくないけれど必要に応じて調べたり書いたりしないといけない人間には、ぜひ手元において置きたい資料でもあります。
HANAではK~POPで韓国語を学ぶ本を2018年に出したのを最後に出せていません。他の本で手が一杯だったのが一番の理由ですが、最近のK-POP曲は英語の歌詞が多かったり、単純なフレーズの反復が多かったりして、語学素材として使えそうな曲がなかなか少ないということがあります(調べが足りないだけかもしれませんが)。そして手を挙げる人がいないということも理由の一つです。
私がもう少しK-POPに興味と理解があればいいのですが、かなり前に5人のグループ(東方神起)の次に13人のグループ(SUPER JUNIOR。12人?)が出てきたときに誰が誰だか分からなくなり脱落し、現在に至ります。
さて何年か前、私が東京の韓国書籍専門店チェッコリで偶然手にした本に『우리가 사랑한 아름다운 노랫말』(책비刊。絶版)というものがありました。
https://product.kyobobook.co.kr/detail/S000001612793
いわゆる7080音楽から90年代音楽まで、101曲の歌詞を収めた本で(上記商品ページから収録曲も見られます)、歌詞の対向面には書き写しのためのスペースが設けられています。
私は韓国で青春時代を過ごしたわけではありませんが、本の中の歌詞を眺めているとじわじわと感じ入るものがあります。こういう企画ならやってみたいんですけどね。



