通信526「2025年3月の韓国」加藤慧

【週刊ハンガンネット通信】第526号 (2025年3月24日発行)

「2025年3月の韓国」 加藤慧
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前回の伊藤先生の通信で、韓国に行きたくなった方も多いのではないでしょうか。偶然にも、私の今回の通信も韓国旅行についてです。

先日一年半ぶりに韓国に行ってきました。最初の目的地は光州。仁川空港から高速バスで向かいました。光州市は私の住む仙台市と姉妹都市でもあり、いつか行ってみたいとずっと思っていた都市です。昨年ノーベル文学賞を受賞した作家ハン・ガンさんの『少年が来る』を読んでその思いはますます強まり、次の渡韓では必ず行こうと決めていました。

「光州事件」の現場となった場所のなかでも、特に全日ビル245に残る245発の弾痕は大変生々しく、ことの恐ろしさを物語っています。こうした歴史があるからこその、昨年12月3日のあの速やかな議員たちと市民の行動があったのだと改めて実感しました。ビルには「광주가 왔다! 파면이 온다!」 という垂れ幕がかけられていました。

その後KTXで移動したソウルでは、今度は途端に弾劾に反対する横断幕が目につきはじめました。たまたま市庁駅付近に行く用事があったのですが、太極旗と星条旗を持った大統領弾劾反対派の人たちが集まり、なかには泣き叫んでいる人もいたりと、異様な雰囲気が漂っていました。若い人は少なく、ほとんどが年配の人でした。

そこから光化門の教保文庫に移動しようとすると、警察のバスで道路が完全にブロックされており、地下を通るしかありません。週末だったこともあり、警察官も多く動員されていて、緊張感のある雰囲気が漂っていました。

教保文庫に入ると、ようやくたどり着けた変わらない景色に一安心という感じでした。買い物を終え、今度は弾劾賛成派の集会が行われている光化門前に移動しましたが、こちらは一転、若者が多く、ペンライトを振りながら明るく連帯する雰囲気です。一緒にいた韓国人の友人と夫とともに行進に参加しました。少し前に目にした光景とのあまりの雰囲気の違いに、道路を隔てる警察バスの車両が、そのまま韓国社会の分断を象徴しているように感じました。

メディアやYouTubeなどには偏った情報が多く、心配になることもありますが、今回光州、そしてソウルで感じたことを、授業のなかでもしっかり伝えていかなければと思いました。また、韓国の友人が韓国文化や社会の今を日本語で発信するPodcastを配信しており、「光州事件」やその後の政治ニュースについても詳しくとりあげているので、こちらも生徒さんたちにおすすめしています。
https://www.youtube.com/@seoul2sendai
先生方にもご視聴の上、ぜひ生徒さま方にご紹介いただきたいです。

今回肌で感じた2025年3月の韓国の空気は、きっと忘れないことでしょう。一日も早く、韓国社会に再び平穏が訪れることを願うばかりです。