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【週刊ハンガンネット通信】第538号 (2025年6月30日発行)
「NHKラジオ英会話を聴いて」 田附和久
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前回は、NHKラジオ「まいにちハングル講座」をご紹介しましたが、私はハングル講座だけでなく、英語や中国語のラジオ講座も楽しんで聴いています。
中でも英語は学習者が多いだけに、番組内容も非常に充実しています。毎日、基本単語だけを用いた英語のみの5分間のストーリーを聴く「Enjoy Simple English」、会話に必要な瞬発力のトレーニングに特化した「英会話タイムトライアル」、そして数週間前にNHKワールドで実際に放送されたニュース番組の音声を素材とする「ニュースで学ぶ『現代英語』」など、いずれも魅力的な内容です。同様の番組が韓国朝鮮語でもあればと、うらやましく思いながら聴いています。
こうした多彩なラインナップの中で、おそらく最も多くのリスナーを集めているのが、老舗中の老舗である「ラジオ英会話」でしょう。朝ドラ「カムカムエヴリバディ」でも取り上げられたように、ラジオ草創期から今日に至るまで、日本における英語学習に計り知れない影響を与えてきた番組です。担当される方々のプレッシャーやご苦労は相当なものと思われますが、現在の大西泰斗先生による講座「ハートでつかめ!英語の極意」は、毎年度、綿密に練り上げられた内容で展開されており、いつも心から感嘆させられています。
年度のテーマに沿って、必要な文法事項を着実に積み上げていくカリキュラムに加え、表現力や運用力を養う練習内容が年々ブラッシュアップされている点も素晴らしいのですが、さらに私が大西先生の講座で特に絶賛したいのは、日々の基本となるダイアログです。男女二人によるダイアログは、複数のストーリーが並行して進行します。考古学者の教授と学生の話、ラーメン好きの宇宙人の話、嫉妬心を抱くアンドロイドのカップルの話、19世紀ロンドンにタイムスリップした宇宙飛行士の話などが日替わりで登場し、それぞれが少しずつ進展していきます。それらの世界線が時に交わることもあり、まるで毎朝の連続ドラマのように、次の展開が気になってつい聴き続けてしまいます。必要な学習項目をしっかり盛り込みながら、こうしたエンターテインメント性あふれるダイアログを執筆される方々にはただただ感服するばかりで、私自身、いつかこんなわくわくするダイアログで構成された韓国朝鮮語テキストを著してみたいという夢も抱かされます。
さて、今年度からその「ラジオ英会話」に、毎回最後の1分間「PRONUNCIATION POLISH」というコーナーが加わりました。レッスンで学んだ表現について、より自然で英語らしい発音を学ぶ時間です。毎号のテキストの巻末に掲載されている「英語らしい発音へのヒント」では、「英語らしい強弱のリズムを生み出すこと」と「なめらかに話すこと」の重要性が説かれ、さらに「なめらかに話す」ための具体的なポイントが以下の通り挙げられ、それらに基づいて日々指導が行われます。
ポイント1 子音連鎖に母音を入れない(例:structure、agree、space)
ポイント2 最後の子音はしっかり発音しなくてもいい(例:have、tap、shut)
ポイント3 同じ音・似た音は2度読む必要はない(例:at ten、good day)
ポイント4 隣接音は影響を与え合う(例:have to、could you、didn’t you)
ポイント5 単語の末尾の子音と次の単語の母音をつなげる(例:I’m an artist. → アイマナーティスト)
ポイント6 /t/ のフラップ(例:letter → レラァ)
ポイント7 /nt/ での /t/ の脱落(例:winter)
ポイント8 強く読む母音の前の /p/ /t/ /k/(気音を伴う強い発音)
ポイント9 機能語の語頭の /h/(代名詞・助動詞の語頭の /h/ の弱化・脱落)
これらを学ぶ中で、ポイント5の子音と母音のつながりや、ポイント9の /h/の弱化・脱落など、韓国朝鮮語と共通する点があることにあらためて気づかされました。そして同時に、韓国朝鮮語の学習では基本段階で徹底的にたたき込まれるこうした発音の基本について、私自身は中高の英語授業でほとんど学んだ記憶がないことに思い至りました。「Get it on」が「げりろん」に聞こえることは好きだった洋楽の歌を通して気づいていましたが、なぜそう聞こえるのかを教室でしっかり習った覚えはありません。もし当時音読させられていたとしても、おそらく「げっと・いっと・おん」と読んでいたことでしょう。
高校を卒業してからおよそ40年。あれほど受験勉強で英単語を覚えたのに、リスニングでは聞き取れなかった理由が今ならよくわかります。正しく発音できないものを、正しく聞き取れるはずがありません。
ずいぶん遠回りをしましたが、私は韓国朝鮮語の学習を通じて、外国語学習における発音学習の重要性がわかるようになり、今改めて英語の発音を学び直しています。日本の英語教育のあり方はあまりに大きな問題なので、今回はこれ以上触れませんが、私と同じように、かつて英語(特にリスニングやスピーキング)が苦手だったものの、韓国朝鮮語は少し話せるようになったという方がいらっしゃれば、ぜひ英語学習に再チャレンジしてみてはいかがでしょうか。英語だけを学んでいたときには持てなかった相対的な視点で見直すことにより、以前とは異なる興味や楽しさをもって取り組めるはずですし、それはまた韓国朝鮮語の学習や教育にもきっと良い影響を与えてくれるのではないでしょうか。
