=================================================
【週刊ハンガンネット通信】第541号(2025年7月28日発行)
「ハングルを勉強したくない」伊藤耕一
=================================================
幡野先生の通信を拝見し、「ハングルは一切勉強したくない、覚えたくない」との一言が私に刺さってきました。
その気持ちはとてもよく分かるなあと。
昨年、カンボジアを訪れた時に、クメール語の文字がタイ語の文字によく似ているなあと感じたことを思い出しました。
試しに両言語の文字をを書いてみると、、、
អរុណសួស្តី
สวัสดีตอนเช้า
両方とも「おはようございます」という意味で、発音をカタカナで書いてみると次のようになります。(Google翻訳で聞こえた音をカタカナで表記したものです。)
アロンスオースタイ
サワディトンチャーオ
次に、たいへん失礼ながら、ふたつの言語の文字を混ぜてみました。
អរុสวัสดีណตอนសួស្តីเช้า
残念ながら私には両言語の文字の違いを識別することができません。
私がクメール語やタイ語を学ぶことになったら、私自身も「対話はできるようになりたいが、文字は勉強したくない」と言ってしまいかねないなあと思いました。
もし私が教える立場で、両言語の文字を教えるとしたら、どのようにするだろうかと考えてみました。
少し遠回りかも知れませんが、両言語の成り立ちの歴史や、なぜこのような文字が編み出されたのかを教えてみて、少しでも文字に興味を持ってもらうのが良いような気がします。
日本語のひらがなは漢字の崩し書き、カタカナは漢字の一部の取り出しでできていて、中学校でそれを教わった時に「そうだったのか」と興味を持ったことを思い出しました。
そこで、Chat GTPに尋ねてみました。
クメール文字(クメールもじ、អក្សរខ្មែរ / ʔɑksɑʔ kʰmae/)は、カンボジアの公用語であるクメール語を書くために使われる文字体系であり、東南アジアの中でも非常に歴史のある文字の一つです。その成り立ちと歴史は、インドから東南アジアへの文化伝播と密接に関係しています。
成り立ち:インド起源の文字
◾ ブラーフミー文字が起源
クメール文字は、古代インドのブラーフミー文字に起源を持っています。ブラーフミー文字は紀元前3世紀ごろのアショーカ王の碑文などで使用され、インド全土に広がりました。
ブラーフミー文字 → 南インドのパッラヴァ文字(6〜7世紀)へと発展
パッラヴァ文字 → 東南アジアに伝わり、各地で独自の文字体系が形成される
◾ クメール文字の原型
パッラヴァ文字が6〜8世紀ごろにクメール地域(現在のカンボジア)に伝わり、現地の言語に合わせて徐々に変化していったことで、クメール文字の原型が形成されました。
📜 歴史的発展
1. 古クメール文字(7〜9世紀)
最も初期の形態。
石碑などに刻まれており、宗教的・政治的な用途で使用。
サンスクリット語とクメール語の両方を記すために使われた。
2. 中期クメール文字(10〜14世紀)
アンコール朝(9〜15世紀)において、宗教的碑文や文書に頻繁に用いられた。
この時期、文字の形が洗練されていく。
彫刻や建築に記された碑文は、現在でも重要な歴史資料。
3. 近世クメール文字(15〜19世紀)
手書き文書や経典に用いられ、文字の形がより丸みを帯びる。
パームリーフ(貝葉)に書かれた仏教文献が多く残る。
4. 現代クメール文字(20世紀以降)
印刷やデジタル化が進み、現在のフォント形式が確立。
現代カンボジアの教育・行政・文学で広く使われている。
✨ 特徴
アブギダ(Abugida):子音を基本とし、母音記号が付加されるインド系文字。
33の基本子音字と、20以上の母音記号。
子音には「独立母音」「有声音と無声音の対」などがある。
数字や句読点も独自のものを使用。
🌏 他の東南アジア文字との関係
クメール文字は、以下の文字体系にも大きな影響を与えています:
タイ文字
ラオ文字
モン文字
ビルマ文字(ミャンマー文字)
これらも、ブラーフミー → パッラヴァ → クメール系という流れを汲んでいます。
なるほど、インドのブラーフミー文字が起源で、クメール文字がタイ文字に影響を与えたことが分かりました。
だから似ているのですね。
タイ文字は次のとおりです。
タイ文字(อักษรไทย)の成り立ちと歴史は、タイの言語文化だけでなく、インドやクメール文化との関わりを理解する上でも非常に興味深いものです。以下に、タイ文字の成り立ちとその歴史を分かりやすくまとめます。
1. タイ文字の起源
タイ文字は、13世紀末頃(1283年)にスコータイ王朝のラームカムヘーン大王によって制定されたと伝えられています。彼が作ったとされるこの文字体系は「スコータイ文字(古タイ文字)」と呼ばれます。
タイ文字のルーツ
タイ文字の成立には、いくつかの文字体系の影響がありました:
パーリ語・サンスクリット語の影響
宗教(上座部仏教)の影響により、パーリ語やサンスクリット語が使われていた。
クメール文字(古カンボジア文字)
タイ文字の直接の母体となったとされている。
クメール文字自体は、ブラーフミー文字(古代インドの文字体系)を起源とする。
2. 文字の構造と特徴
タイ文字は**アブギダ(母音付加型の音節文字)**に分類されます。
子音字:44文字
母音記号:30種類以上(子音の周囲に配置される)
声調記号:4種類(タイ語は声調言語)
例:คำ(「カム」=言葉)
→ 子音 ค(k)+ 母音 ำ(-am)
3. タイ文字の発展と変遷
■ スコータイ時代(13世紀〜14世紀)
最初の公式な文字体系が成立。
石碑(ラームカムヘーン大王碑文)が最古のタイ文字資料とされる。
■ アユタヤー時代(14世紀〜18世紀)
宗教・文学の発展とともに、文字の形がより規則化。
サンスクリットやパーリ語の単語が多く導入され、表記も複雑に。
■ ラッタナコーシン時代(18世紀〜現在)
書体や文字の形状がさらに洗練され、現在使われる形に近づく。
印刷技術の導入により、標準化が進む。
4. 現代のタイ文字
現在でもタイ文字は大きく変化せず使われ続けています。ラテン文字化(ローマ字化)も試みられましたが、日常生活ではタイ文字が圧倒的に使用されています。
また、ラオス文字やカレン文字など、周辺の言語にもタイ文字の影響が見られます。
タイ文字は13世紀に制定され、やはりクメール文字の影響を受けていることが分かります。
両言語とも子音と母音の数が半端なく心折れそうになりそうですが、この文字を覚えたら東南アジアや南アジアといった他の言語の文字にもつながりそうで、少しやる気が出そうな気がしてきました。
「アブギダ」という文字を初めて見ましたが、まず子音を書いて母音は付加的に上下に書くシステムの文字体系の名前とのことで、これを知ってから両文字を見ると「なるほど」と思いました。
また「アブギダ」は「いろは」や「アルファベット」と同様に順番に並んだ文字の最初の4つを発音したものだそうです。
これに対するものとして「アブジャド」というものもあり、これは古代フェニキア文字が元祖で子音だけを書いて行くシステムだそうです。
すると「母音はどのように表記するの?」という疑問が生じますが、切りがないのでここまでにしたいと思います。
私自身は、韓国語を勉強するならハングルは覚えた方が良いと考えます。
どうすればハングルを勉強したいと思ってもらえるか、私も考えてみたいと思いました。
※この原稿の下書きを書いた直後に、カンボジアとタイの武力紛争のニュースが入ってきました。意図せずこのタイミングでの配信となってしまいましたが、この通信は紛争に対する特段の意図がないことを申し添えます。これ以上の拡大がないことを祈っています。
