通信543「ハングルを介さない韓国語学習」加藤 慧

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【週刊ハンガンネット通信】第543号 (2025年8月4日発行)
「ハングルを介さない韓国語学習」 加藤 慧=================================================

私も伊藤先生に続き、先日の幡野先生の通信のテーマについて書いてみたいと思います。具体的には幡野先生への返信でも触れたアルファベットを用いた教育の可能性について、もう少し掘り下げてみます。

私はハングルや前回伊藤先生がご紹介くださったタイ文字などの音素文字が大好きな人間なので、ハングルはもちろん、台湾華語の発音記号である注音符号も楽しみながら覚えることができました。ただ、それが苦痛となるタイプの人にとっては、わざわざ苦労してまで覚えたくないと感じてしまうのも無理はないかもしれません。

注音符号はハングルと同様の音素文字で、例えば「你好」の場合ㄋㄧˇㄏㄠˇという表記になり、次の対応をすべて覚えていなければ発音することができません。
ㄋ→n
ㄧ→i
ㄏ→h
ㄠ→ao

これをひとつひとつ覚えるのはなかなか大変なので、台湾華語学習者のなかでも、中国の中国語と同様ピンインのみを使った学習をしている人が多い印象です。ピンインでの表記だとnǐ hǎoとなり、感覚的にも読むことが可能なためです。ただし、注音の方が発音を正確に表すことが可能と言われています。

この注音とピンインの対応を、ハングルとアルファベットの対応に置き換えてみてはどうだろうかと最近考えています。例えばpapago翻訳を使うと、次のようにハングルとアルファベットが併記されます。

한글을 외우고 싶지 않아요
hangeureul weugo sipjji anayo

これは旅行先での利用などで、ハングルを読めなくても発話することを想定されていると思います。もちろん、eu, eo などがローマ字読みに引っ張られないように発音のポイントをよく説明し練習してもらう必要が出てきますが、旅行会話くらいならなんとかなりそうです。

ちなみに日本語の場合でも、日本滞在中のK−POPアーティスト(英語・韓国語のバイリンガル)のオンライン上でのファン(母語は不明)とのやりとりにこのようなものがありました。

Yakitori naniga suki? − Zenbu sukidesu.

日本語のひらがなやカタカナは音素文字ではなく音節文字なので、また分けて考える必要があるかもしれませんが、音だけでコミュニケーションをとるという目的に限っていえば、アルファベットの使用もありなのかもしれないとは思いました。

とはいえ、ハングルのしくみがわかって読めたときのあのパズルが解けたような快感は、韓国語学習の最初の成功体験と言えるものではないでしょうか。大学の講義でも、記号にしか見えなかったハングルが読めるのがうれしく、電車や街中で見かけると意味もなく読んでは楽しんでいるというコメントをくれる学生が多くいます。その快感を知らないままでいるのはもったいないと思うので、少しだけ我慢してなんとか覚えてもらいたいなというのが本音なのでした。