通信536「教室運営で大切だと感じること~スクール運営担当になって6カ月~」浅見綾子

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【週刊ハンガンネット通信】第536号 (2025年6月23日発行)

「教室運営で大切だと感じること〜スクール運営担当になって6カ月〜」
   HANA韓国語スクール 浅見綾子

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HANA韓国語スクールの運営担当になって、気づけば半年が経ちました。

毎日、「どうすればこのスクールをもっとよく運営していけるだろうか」と、頭を悩ませる日々です。

実際に運営に携わるようになって、韓国語教室を継続的に成長・安定させていくためには、いくつかの重要な要素があると実感するようになりました。

ここでは、私が特に大切だと感じている4つをご紹介します。

1.授業の質

これは、言うまでもなく教室の根幹です。

信頼できる教材や、誠実で指導力のある講師をお迎えし、学習者のニーズに応じた授業を提供していくこと。質の高い授業こそが、受講生さんの満足度と継続につながり、最終的に教室の評判を支えてくれます。

2.適正価格

授業内容に見合った価格設定も、運営においては非常に大切です。

ただし、「適正価格」といっても正解が一つあるわけではなく、無料イベントでまず教室を知ってもらう戦略や、あえて価格を抑えて新規層にアプローチするなど、柔軟な考え方も必要だと感じています。

とはいえ、HANAスクールの母体である出版社HANAの方針も含め、

「やたらと安売りはしない」という考えがあります。

AIを使ったコンテンツや、YouTube・インスタなどの無料コンテンツがあふれるなか、「質の高いものを適正価格で提供する」という姿勢を貫くことも、今後ますます重要になってくると感じています。

3.広報(=情報発信)

そして、私がいま最も難しさと重要性を感じているのが、この「広報」です。

いくら良い講師をお迎えし、魅力的な授業を準備しても、それが必要とする人に届かなければ、意味がありません。

広報は、「いいコピーを書けば人が集まる」という単純な話ではありません。

学習者は、内容を読み込む前に、発信者や教室の「信頼感」を無意識に感じ取っているものだと思います。

日頃から誠実に情報を出し、派手さよりも一貫性や誠実さを大切にしていくこと。

そうして少しずつ積み上げた信頼があるからこそ、「今度の講座もきっとよさそう」と思ってもらえるのだと実感しています。これは、個人で教室を運営されている先生にもきっと共通する感覚ではないでしょうか。

4.受講生対応・サポート体制

授業以外の部分も、教室運営には欠かせません。

問い合わせへの対応、欠席時のサポート、受講生への気配りなど、いわば「授業以外の体験」こそが、教室への信頼を高め、継続受講へとつながっていきます。

もちろん、他にも大事な要素はたくさんありますが、今現在、運営を始めてまだ日が浅い私が特に強く感じているのは、この4つです。

なかでも、「広報の難しさ」には直面する日々です。

SNSやメルマガ、チラシや口コミ、どの手段においても、単なる告知ではなく、「どうすれば信頼と興味を引き寄せられるか」という視点が求められます。

同じような悩みを抱えている先生がいらっしゃいましたら、ぜひお伺いしたいです。

皆さんの工夫や取り組みもお聞きできたら嬉しいです。

通信535「加齢と知的能力」寄田晴代

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【週刊ハンガンネット通信】第535号 (2025年6月16日発行)
「加齢と知的能力」寄田晴代
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 4月に文字から始まった入門クラスでは、そろそろハングルをマスターして文法編に入っている頃でしょうか。

私が担当するおとなのクラスでは、脱落せずに最後まで通ってほしいので、ややゆっくりめに進んでいます。

しかし、ゆっくり進むからといって、ハングルをどんどん覚えられるわけではないので毎年進度のスピードに悩みます。

年齢を重ねると「覚える」ことに時間がかかる。と、いうより、何でも忘れてしまいます。

自分のことですが、新しい単語を覚えるどころか、何しに2階に上がって来たのかも覚えていないことがあります。

すべてを加齢のせいにして、仕方ないよね、と思っていたところ、知的能力の種類によっては高齢になっても向上するという嬉しい話を新聞記事でみつけたので、共有させていただきます。

知的な能力には主に2種類あるのだそうです。

一つは、情報処理スピードが当てはまる「流動性知能」、もう一つは知識や言語能力が該当する「結晶性知能」です。

後者は経験や学習によって得られる知的能力ですが、70歳ころまで伸び続けた後、ゆるやかに低下するということが、老化に関する疫学調査で明らかになったそうです。(国立長寿医療研究センターが40歳以上の住民を対象に実施。)

また、脳の灰白質という領域は10~20代でもっとも体積が大きくなり、その後ゆっくり減少して知的機能も低下していくのですが、

白質という領域は、何かを学ぶなど脳を使い続けることで体積が増えていきます。

脳には変化する力があるので、何歳になっても脳の働きは向上するのだそうです。

まさに、韓国語に取り組むおとなにとって励ましのことばではありませんか。

そして、知的な能力の維持に寄与する語学学習や楽器演奏、運動などを続けるには、スモールステップ法(少しずつ無理せず行う)、すでにある習慣と一緒に行う(歯磨き後に音読など)、楽しく取り組むこと、が脳の癖をうまく利用した方法なのだとか。

東北大学加齢医学研究所の瀧靖之教授によると「記憶をつかさどる海馬では年をとっても神経細胞が新しく生まれている。楽しくやる方が記憶に残りやすく、上達もしやすい」のだそうです。

やっとハングルを全部覚えたと思ったら、次々と発音変化が出てきて「このまま読んじゃだめなの?」と落胆させられる時期でもあります。楽しく記憶に残る授業で乗り越えたいです。

参考:「結晶性知能」高齢でも向上 2025年1月18日日本経済新聞

通信534「チーム分けの地域性について」加藤慧

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【週刊ハンガンネット通信】第534号 (2025年6月2日発行)
「チーム分けの地域性について」加藤慧
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先生方は子どものころ、チーム分けやペア決めをどのようにしていましたか?

私の場合、二つに分かれるときは「うーらおーもて(手のひらvs手の甲)」あるいは「グーッパ(グーvsパー)」、三つに分かれるときは「グーチョッパー(グーvsチョキvsパー)」と言っていました。

この「うらおもて」はどうも全国的にみると主流ではないようで、長崎・兵庫・宮城で主に使われ、他の地域は掛け声はさまざまなものの「グーvsパー」のみというところが多いようです。
https://j-town.net/2015/10/02212950.html?p=all

一方韓国ではこの「うらおもて」にあたるものが主流で、このような地域性があるそうです。https://m.bobaedream.co.kr/board/bbs_view/strange/5933524

このチーム分けの掛け声 (편가르기 구호) を方言ととらえた国語国文科の学生の研究までありました。
https://linc.ajou.ac.kr/acot/?m=30002&mode=view&idx=727

三つにチーム分けする場合は、「うらおもて」をしてペアになった順に抜けていくか、「うらおもて+手刀」などで分ける場合もあるそうです。

こちらの動画では私の知っているものに近いやり方をしています。
https://youtu.be/aWW6iHFDu8o?si=GOKVJOZJWHXJ2uu3

韓国、日本各地のケースをもっと知りたいので、よろしければ先生方のケースをぜひ教えてください。

大人になるとチーム分けをする機会というのもなかなかないので実用的とはいえませんが、授業でグループワークをする際などにゲーム感覚で取り入れてみても面白いかもしれませんね。

通信533「マレー語のその後」伊藤耕一

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【週刊ハンガンネット通信】第533号 (2025年5月31日発行)
「マレー語のその後」伊藤耕一
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マレーシアから帰国し、早くも10ヶ月が経過しようとしています。
食事、生活、気候、仕事、などなど、元の日本の諸習慣が自分の中にやっと戻ってきました。

10か月前、職場の皆さんがフェアウェルパーティーを開いてくださり、マレー語でスピーチしたことを思い出しました。
この時は原稿を書いて、事前に読む練習をして、話す内容を覚える努力をしてからスピーチに臨みました。
2〜3分の内容でしたが、覚えた単語を頭から絞り出すような感じでゆっくりと、時々原稿に目を落としつつ話した記憶があります。
初級の学習を終えた学習者くらいの実力だったかと思います。

日本に帰国してから、マレー語で話す機会はメッキリ減りましたが、ふとした瞬間に簡単なフレーズをマレー語に訳すとどうなるかを考えることが増えました。
もし、今マレーシアに行って、当時の仲間と出会ったらどのように声を掛けるだろうかと考えながら、頭の中で作文する感じです。
これは学生時代の韓国語学習中にもやっていたことです。
例えば、このような感じです。
 
久しぶりですね。
Lama tak jumpa.
Long time no see.
 
元気でしたか?
Apa khabar?
How are you?
 
日本に戻ってから、もう10ヶ月も経ちました。
Suda sepuluh bulan berlalu sejak saya kembali ke Jepun.
Already ten month passed since I returned to Japan.
 
そして作文を続けていると、知らない単語や忘れた単語が出てきます。
日本に戻ってからもマレー語の勉強を続けています。
Saya ? belajar Bahasa Melayu ? saya kembali ke Jepun.
I still study language Maley after I returned to Japan.

このように頭の中で作文した時に「”still” や “after”はマレー語で何だろう? 忘れたなあ。」と思い、Google翻訳で調べて単語を当てはめてみるようなことをしています。
こんな時に「韓国語の基本文法が分かった頃にも同じことをしていたなあ。」と過去の自分を思い返します。
頭の中ではスラスラと作文できて話せるような気がするのですが、音声でアウトプットしようとしてもスムーズに単語が出てこなかったことを思い出します。
学生の時に、音声でアウトプットしないと定着しないことを、痛いほど体験したので、マレー語はできるだけ声に出してみるようにしています。
最も効率的に定着するのは、実際に話して間違えてその間違いを指摘された時だと私は思っていますが、時々通話アプリで友人と話をすると、間違いを指摘してくれることがあり、ありがたく思います。

このような自習とアウトプットを繰り返しながら、次にマレーシアに行った時に、友人たちを驚かせられるようなマレー語を話せる自分になることを目標にしている今日この頃です。

通信532 「講師面接で、よく見る傾向2点について」幡野泉

【週刊ハンガンネット通信】第532号 (2025年5月19日発行)

「講師面接で、よく見る傾向2点について」アイケーブリッジ外語学院 幡野泉=================================================
※一週遅れての発行となります。申し訳ありません。

ハンガンネットの先生方、アンニョンハセヨ?
先日の5/24土に開催したハンセミにご参加くださった先生方、
どうもありがとうございました。
会場とオンラインのハイブリッド開催でした。
会場参加の皆さんとはその後、新橋の韓国料理屋さんに赴き、
韓国料理を楽しみました。
やはり交流するというのは良いですね。
セミナーから懇親会まで、いろんな情報交換ができました。

「語学学校経営の実情と今後の課題について」という題で発表しました。
その中で少し掘り下げて話し、またその後、割と反響が
大きかった内容として、「講師の採用について」がありました。

面接の際に工夫していることや、模擬授業の内容、
フィードバック、その後の研修、正式採用までの流れを詳しく
話しました。ここでまた詳しく話すことはできませんが、
面接にいらっしゃる先生方の中に多く見られる傾向について、
ここで2点、ピックアップしてみたいと思います。

(1つ目)ハングルの書き順が違う方が多いです
(2つ目)ずっと話している方が多いです

2つ目に関してですが、模擬授業の指示書に、
「生徒役の方に発言を促してください」と書いています。
また、開始前も言及するのですが、ほとんど当てず(発言させず)、
ずっと講義をしている方が多いのです。
経験の多い少ないに関係なく、これらの傾向があります。

「私は大丈夫」とお思いかもしれませんが、
いちど、自身のハングルの書き順を教材と見比べたり、
自身の授業を録音して、自分がどれくらい(長く)話しているか
聞いてみてはいかがでしょうか。多かれ少なかれ、何かしら
発見があるのではないかと思います。

さておきまして、次回のハンガンネットセミナーでも多くの先生方と
交流できることを楽しみにしています!

通信531 「教室・授業の現状・お悩み、交流しませんか」前田真彦

【週刊ハンガンネット通信】第531号 (2025年5月12日発行)

「教室・授業の現状・お悩み、交流しませんか」ミレ韓国語学院 前田真彦
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まずはこの動画を見てください。
https://youtu.be/Jv0B1HCYR6g

5月24日(土)19時20分~20時50分
発表講師:幡野泉(アイケーブリッジ外語学院代表)
テーマ:語学学校経営の実情と今後の課題について
打ち合わせ動画です。

幡野先生には、ミレを立ち上げる時に本当にお世話になりました。虎の門の教室に伺っていろいろお話を伺って、脱サラして独立する直前の背中を押していただきました。
聞くところによると、幡野先生も、起業時にはコリ文の金順玉先生を訪ねているとのこと。

事業を立ち上げるのは大変ですので、みなさん先人の知恵をお借りして、勇気をもらって門出をしているのですね。

この動画は5分に短くカットしていますが、1時間ぐらいおしゃべりをしているうちの5分なのです。コリ文で行った僕のセミナー(2010年2月)にhimeさんが参加していて、そこからhimeさんとつながったこと。アイケーブリッジのスピーチ大会に金順玉先生、金玄謹先生と見学に行ったこと、またコロナ禍ではどのように授業をしていたのか、などなど、いろいろ盛り上がり、おしゃべりは尽きませんでした。

こうやって自分の学院・教室の実情を語り、そして、他の学院の実情や悩みを聞く。これこそハンガンネットの役割だと思いました。

学院・教室の立ち上げや運営は、一人ではできません。いろんな周辺の先輩・同僚の話を聞きながら固めていくものだと思います。学院の立ち上げという大きなことでなくても、1時間の授業の進め方でも、いろんな悩みはあるものです。そしてそれらはほとんどの場合、共通しています。

お悩みについて話すだけでも、心が晴れるものです。
ハンガンネットは、授業情報の交流・研鑽の場です。
今回の幡野先生との打ち合わせを通して、ハンガンネットの存在意義の大きさを改めて確認できた次第です。

もっと情報交流しましょう。オープンに自分の学院・教室・授業の実情を語り、おなじ悩みを持っている(あるいはすでに解決してきた先生方の)お話を聞き、お互いに伸びていく、そんな会にしていきましょう。

現役講師、講師志望者、みんな集まって、元気になりましょう。

お申込み
https://x.gd/fO0Ly

通信530 「ハングルの前に」日下隆博

【週刊ハンガンネット通信】第530号 (2025年5月5日発行)

「ハングルの前に」 ワカンドウ韓国語教室 日下隆博
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4月から始まる日本の学校の年度、2025年度が始まり1か月が経ちました。
この間ハングルを覚える授業を、新規の生徒を対象に開始した先生もいらっしゃることかと思います。

さてこのハングルを覚える授業ですがまず先生方は最初にどんな話をしますでしょうか?

近年の授業ですと、知っている韓国語を生徒に聞いてみる、といった導入部もあるかと思います。

そして本題のハングルを説明する直前には何をしますでしょうか?
母音と子音を知らない生徒を確認するのではないかと思います。

この時生徒全員が「問題ありません」となればすぐに本題に入れますが、母音と子音がわからない生徒の割合はある程度存在することは織り込み済みで授業準備をしているかと思います。

教科書によってはこの母音と子音の詳しい説明がないものも多いです。

母音と子音をこれまで意識したことのない生徒は、ガッテンしてもらうのに意外と時間がかかることがあります。
またこの時点であきらめ顔の生徒を見ると母音と子音は人によっては大変ないばらの道なのかもしれないと思うこともあります。

中には授業冒頭から初声中声終声の説明から開始する先生もいるのかもしれませんが、それよりも情報量の少ない母音と子音の違いで挫折する生徒が出ないように、少しでも良い方法を模索したいと思います。

通信529「NHKまいにちハングル講座」田附和久

【週刊ハンガンネット通信】第529号 (2025年4月28日発行)

「NHKまいにちハングル講座」田附和久
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毎年桜が咲く頃になると、NHKのハングル講座が新規開講されるのを楽しみにしています。
特に、6か月という限られた期間で入門・初級のエッセンスを教えるラジオ「まいにちハングル講座」は、朝鮮語初級指導者にとってたいへん参考になる内容が多く、担当される先生方それぞれの工夫に富んだ構成から、毎期大いに刺激を受けています。

今年度4月開講のラジオ「まいにちハングル講座」は、辻野裕紀先生が担当していらっしゃいます。
テキスト4月号の「開講のことば」では、辻野先生ご自身が初めてこの言語に触れたのがこのラジオ講座であったこと、そして長い歳月を経て講師を務めることとなった感慨が、先生にしては珍しく難解な漢字語を控え目にされた文体で記されています。毎日の講座は、辻野先生のその熱い思い、そして研究の蓄積、教育実践の成果が存分に込められており、私は毎日すっかり魅了されています。

「あなたと語る100のことば」という講座名の通り、実践的なフレーズが毎日紹介されますが、単なるフレーズ紹介にとどまらず、そこから文字、発音、文法を着実に学んでいく緻密な構成となっています。1回15分という限られた時間の中に詰め込まれた情報量は濃密で、初級既修者であっても毎回新たな学びを得られる深い内容が扱われています。
例えば、開講2日目にして「네が「デ」に聞こえる?」という問いが取り上げられ、音声学に基づく丁寧な解説が加えられていたのには、深く敬服しました。

また、言語によって「こだわる部分が違う」ということをさまざまな場面で強調されている点にも、大いに共感させられています。このことは、いずれの言語の学習においても初級学習の段階でしっかり伝えるべきでしょう。

さらに今期の講座で印象深いのは、説明の際に「この言語では」という表現を意識的に用いていらっしゃる点です。これまでの担当講師もこの表現を使われてはいましたが、辻野先生は、聴き手の耳に残るよう特に意識して発しておられるように感じます。

そもそも、なぜ「韓国語では」ではなく「この言語では」と言うのか、また、なぜ他の言語のラジオ講座が「まいにち〇〇語」であるのに、この講座だけが「まいにちハングル講座」なのか——その理由は、今日、聴取者や世間一般の間でどれだけ理解されているのでしょうか。
もしご存じない方がいらっしゃれば、1970年代の署名運動に始まり、言語名称をめぐる紆余曲折を経て、ようやく1984年4月にNHKハングル講座が開講された経緯を、ぜひ調べてみていただきたいと思います(過去の新聞記事や研究論文などで確認できるはずです)。

NHKのテレビ・ラジオでハングル講座が始まってから、41年の歳月が流れました。
私は、辻野先生の「この言語では」という言葉を耳にするたびに、大学の「朝鮮語」学科で「한국어」を学び始めた約40年前の初心を思い起こすと同時に、日本国内でこの言語を学ぶ場を広げるため、多くの困難を乗り越えて努力された先達(その多くはすでに鬼籍に入られました)のことを思い出し、身が引き締まる思いを新たにしています。

通信528「中学生、高校生向けの独習書を出版」 ペ・ジョンリョル

【週刊ハンガンネット通信】第528号 (2025年4月21日発行)

「中学生、高校生向けの独習書を出版」 ペ・ジョンリョル
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2年ぶりに担当した学習書が4月の末に発売されます。タイトルは『ひとりで学べる!中学生と高校生のためのはじめての韓国語』という本です。

この本の録音は韓国で行いました。これまで韓国で録音する際に日本語の声優さんが安定せず、その悩みについてこの通信で書いたことがあります。

しかし、今回の日本語の声優さんは「大当たり」でした。ほぼノーミスでした。

それで今後のためにと、スタジオに連絡して声優さんの名前を教えてもらったのですが、なんと、以前お願いしたことのある人でした。前は録り直しがいくつも生じたので、同じ人でもその時の調子や集中力の問題などがあるのかもしれません。

韓国での録音で困るもう一つの問題として、録音したい音声について、こちらの意図がなかなか伝わらなかったり、声優さん本人が理解・認識できなかったりすることがあります。

今回も発音変化や抑揚のサンプルを録る際にそういうことが生じました。たとえば、簡単な語を使ってアクセントを説明するための音声が必要だったのですが、가수、노래、가요などなど、本で説明した抑揚どおりの音声をなかなか取ることができませんでした。

こういう音声を取るためには、非母語話者に韓国語を教えるための学習書の意図を理解できる人、言語学を学んだ人や日本語話者への教授経験がある人がいいように思います。あるいは、いっそAIや音声読み上げサービスにやらせた方が、感情なしに規則どおりに発声してうまくいくのかもしれません。

蛇足かもしれませんが、この本には「新大久保」という地名が何度か登場します。声優さんは[시노쿠보/シノクボ]と発音すると思い込んでいたら、3人の声優さん全員が[신오쿠보/シンオクボ]と発音してきました。新大久保周辺の韓国語話者たちはみな[시노쿠보/シノクボ]と呼んでいるはずなので、録り直してもらいましたが、今回の声優さんたちが「新大久保」や「大久保」のことを知っていたのか知らなかったのか、なぜそう読んだのかは聞いてみたいところです。

なお、この中高生向けの本は、用言についてはヘヨ体現在形を教え、そこから疑問形、過去形、パンマル、命令形、勧誘形、안(アン)否定形、さらにいくつかの表現を学ぶ流れになっています。

つまり用言は辞書形で提示せず、活用も基本的に学ばないわけです(ただし次の学習段階への橋渡しとして本の最後で説明しています)。

文字と発音、活用以外の文法はもちろん学びます。高校の授業で1年間かけて学ぶ内容を4週間(28日=28課)で習得する構成となっています。

著者は、JAKEHS〔ジェーケーズ=高等学校韓国朝鮮語教育ネットワーク)会員で長年都内の高校や社会人向け講座で韓国語を教えていらっしゃる武井一先生です。

機会があったら、お手に取って見ていただければ幸いです!