通信011 「二往復会話」での会話練習

【週刊ハンガンネット通信】《第11号》(2011年8月15日発行)
「二往復会話」での会話練習
池上和芳 (いけのうえ かずよし)
暑い日が続きますが、皆さんお元気にお過ごしですか。
本日は、日々の授業での、私の拙い実践についてお伝えできればと思います。
生徒たちの会話能力が、どうすれば向上するか、試行錯誤を繰り返していますが、最近はペアでの「2往復会話」 を実施することが多いです。
会話練習は、教科書やノートを見ながら行うのではなく、質問内容を記憶したうえで、相手の目を見ながら笑顔で会話することが大事だと私は思っているのですが、なぜ「2往復」なのかと言いますと、「2往復」であれば、
1. 内容(質問数:2つ)を記憶する負担が少ない。
2. 「2往復」をペアで交替して行えば4往復となり、「会話した」という満足感が得られやすい。
3. 会話例を比較的作成しやすい。
4. 内容が短い分、練習の目的(どの表現を身に付ければ良いのか)を明確にしやすい。
などのメリットがあると思っています。 以下にいくつか、会話例をお示しします。会話文の後の※は、練習を実施するうえで気を付けていることなどです。
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《例1》 主な目的: 좋아해요の前で를/을を用いる練習
A : 바다를 좋아해요? 산을 좋아해요?
B : 바다를(または산을) 좋아해요.
A : 요즘 바다에(または산에) 갔어요?
B : 네, 갔어요. (または아뇨, 안 갔어요)
※海と山の両方が好きな場合も、どちらかに決めて会話に臨むよう指示する。
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《例2》 主な目的: 「~や~」の練習
A : 인터넷 쇼핑을 해요?
B : 네, 해요.
A : 뭘 사요?
B : 〇〇나/이나 △△를/을 사요.
※この会話は、クラスの全員がインターネットショッピングをしている場合にのみ行う。
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《例3》 主な目的: 「誰々のファン」という言い方の練習
A : 〇〇 씨(←会話の相手)는 배용준 팬이에요?
B : 아뇨, 저는 배용준 팬이 아니에요.
A : 그럼 누구 팬이에요?
B : △△ 팬이에요.
※배용준のファンがクラスにいる場合は他の俳優に置き換えて行う。팬を、しっかり激音で発音するよう指示する。
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 《例4》 主な目的: 行けない理由を言う練習
A : 한국을 좋아해요?
B : 네, 좋아해요.
A : 그럼 한국에 자주 가요?
B : 아뇨, 바빠서 자주 못 가요.
※바빠서の代わりに用いられるものを、事前にいくつか学んでおく。
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その日の学習内容に合わせて、「2往復会話」を2~3つ準備しています。授業中、時間に余裕がある場合は、
ペアを替えて別の人とさらに練習することで、会話を8往復することになり、定着度がより高くなるようです。
また、どのクラスでは、どういう「2往復会話」をしてきたか講師が記録して蓄積し、それらを折に触れて復習させることの大切さも感じています。
皆さんはそれぞれの教育現場で、どういう実践をしていらっしゃるのでしょうか?メーリングリストや掲示板でのご発信をお待ちしております。

通信010 楽しい時間、笑いの中にこそ

 【週刊ハンガンネット通信】《第10号》(2011年8月8 日発行)
林 鳩順(Lim Koosoon)
ハンガンネット会員の皆様
林 鳩順です。暑い毎日、いかがお過ごしですか?
週刊ハンガンネット通信が10号を迎えました。
前回、続きは11日に・・・と書いてしまいましたが、
間違いでした。大変失礼いたしました。
さて、皆さんには夏休みがありますか?
お盆前後はどの教室もお休みになると思います。
私はお盆にはチェサがありますし、たまにはゆっくり休みたいので、
今は必死で目の前のことに取り組んでいます。
今までは自分の授業だけしていれば十分でしたが、
何しろ「アカデミー」と名の付くカルチャーセンターを始めたものですから、
いろんなジャンルに関する知識やノウハウを知らなければならなくなりました。
この間、約80名の講師の方々と面接し、
相談しながら講座を組み立ててきました。
そんな中でも、やはり一番の関心は語学です。
韓国語の先生は私以外に3人、フランス語、スペイン語、中国語二人、英語二人の
先生方にも来ていただくことになりました。
ネイティブの先生、日本人の先生、各々、授業に対する考えはまちまちです。
でも、学生ではない幅広い年齢層に教えるという共通点を活かし、
共有できる良いヒントが得られるのではないかと期待しています。
相変わらず、韓流文化は衰えることを知らず、
私の教室にも年齢幅が50ほど違う方々が同じ教室で学んでいらっしゃいます。
いつも感心するのは、その熱心で忠実な受講態度fです。
前回の通信で、幡野先生が楽しいご提案をされていましたね。
まさにおっしゃるとおりだと思います。
引き出す、考えさせる余裕を持って教壇に立つことの大切さを再認識しました。
当たり前だと思っていることが、案外おろそかになっていたり、
やっているつもりが、まったくできていなかったり・・・
現役の先生方のご意見に耳を傾けることは、
本当に大事なことですよね。
 私はこの数年間、初級レベルから、10人以下のクラスなら、
受講生が毎時間、何でも良いから(自分が見聞きしたこと、感じたことなど)
前に出て韓国語で短いスピーチをすることを習慣づけしました。
いやがっていた方もいましたが、
今ではすっかり聞いてもらえるうれしさも身に付いたようで、
継続は力なりを実感しています。
ですから授業は笑いが絶えなくて、
私もとても楽しみにしています。
楽しい時間、笑いの中にこそ残るものがあるという私なりの持論です。
ではまた, みなさまごきげんよう!!

通信009 間違いは、本人に直させる

【週刊ハンガンネット通信】《第9号》(2011年8月1 日発行)
「間違いは、本人に直させる」

アイケーブリッジ外語学院  幡野 泉

当校では昨年から中国語講座も始めました。私が「中国語を学び
たい」という思いが強くなり、「他校に行くよりは自校で」と思い、講座を開始しました。

なぜ中国語を学びたくなったかについては、以前当校メールマガジンに書かせて頂いています。
http://www.ikbridge.co.jp/mail/m290.htm
http://www.ikbridge.co.jp/mail/m311.htm

「3年で上級レベル到達」「自校の中国語の先生になる」ことを目標に
頑張っています。「留学しなくても、忙しくても」上級レベルになれる
ということを自らが示そうとプレッシャーをかけています。

さてそこで、これまで韓国語を教えていく中で、自分が非ネイティブで
あることから韓国語学習者の気持ちはよく理解できている方だと
思っていたのですが、昨年、中国語の学習を始めてみると
新たなる発見がいろいろとありました。その中の一つで、是非
お伝えしたいことを書かせて頂きたいと思います。

学習者が音読しているとき、質問に答えるとき、何でも良いの
ですがとにかく学習者は当然のことながら間違います。
発音を間違えたり、単語を間違えたり……。

自分が中国語を勉強して分かったのですが、間違えたときは、
それを発した瞬間に「あ、いまの違う」と、意外と気付くものなんです。
また、先生が「おやっ」という表情や反応を見せたときに瞬間的に
正しいものが分かったりします。

なので、目の前の学習者が間違った発音、単語を発したとき、
(修正の必要がある場合ですが)すこしだけ待って、そしてすぐ修正
せずに「おや?」という声に出さない反応をすると良いと思うのです。
もしくは、「タシ ハンボン」「○○、マッスムニカ?」など、
間違いを自らに気付かせ修正させるように誘導するなど……。

<例>
先生:「チグム ミョッシエヨ?(いま何時ですか?)」
学生:×「オーシエヨ(5時です)」

ここで先生が「タソッシです」とすぐ言わずに、

・「おや?」「あれ?」という表情を見せる、少し身を乗り出すなりする
・「ん?」と言う
・「オーシ……???」と言う

だいたいここで間違いに気付く人が多いですが、それでも反応がなければ、

・「オーシ、じゃなくて……」「オーシ、アニエヨ~」「オーシ、マジャヨ?」など
・「ハンシ、トゥシ、セシ……」

だいたいこれで「あっ!」となり、学習者は自身のの発言を自ら
修正することができます。この「あっ!」という気付きの積み重ねが、
「単語の定着」に繋がっていくのだと思います。

また、このように間違いを講師が修正するのではなく、気付かせ、
修正させることが良い理由は、「人が何かを身につけるときは、
アウトプット(発すること)なしでは身に付かない」ためですね。

前号で前田先生が「他の人に説明させる」ことを取り入れて
いらっしゃると紹介されていましたが、まさにこのためだと思います。
これは語学の学習だけでなく、何かの行動を起こすとき、
仕事を覚えるときなどもそうですね。

「私は先生である」「韓国語を教える」と思うと、受講生の間違いを
修正する、教えてあげる役目だと思ってしまいがちですが、まずは
気付かせる、そして話すことができるよう誘導することが大切かと思います。

もちろん、単語や文法の引き出しがまだ少ないとき、文法説明や
その他、以上の手段を取り入れることができない場面も多いですが、
自身がどんな風に目の前の学習者の間違いを修正しているか、
一度、振り返ってみると良いかも知れません。

通信008 両輪

【週刊ハンガンネット通信】《第8号》(2011年7月25 日発行)
「両輪」

ミレ韓国語学院 前田真彦

私が主宰する「ミレ韓国語学院」に、他の韓国語教室から見学に
来る受講生が少しずつ増えてきています。

その方たちはミレの授業に参加なさって「全然教え方がちがう」と
驚かれます。
たとえば、私は授業中に受講生によく次のような質問をします。「
ヘヨ体の作り方は?」「鼻音化って何ですか?」など。受講生に答
えてもらうのです。
そうするとその方がどのくらい理解しているかよくわかります。

最近よくする方法ですが、文法事項を説明した後、「隣の人にわか
りやすく説明してあげてください」と要求します。すると隣同士、「ヘ
ヨ体はね、ダを取った時の最後の母音が陽母音の時は~」などと
お互い説明し合っています。これ、効果的なんですよ。人に説明す
るのは、本当にきっちり理解していないと人には説明できませんか
らね。

他の教室からきた人は、ほとんどの場合こういう説明ができません。
ではどういう風に教わってきたのかと聞くと、「こういう場合はこう」と
理屈ではなく、体験として慣れで学んできたようです。

「入門初級の段階は、文法より、ネイティブの発音にたくさん触れて
慣れる」というのも、一つの教育方法だとは理解しますが、その方式
で中級上級に上がっていくのはやはり無理があるようで、こうしてミレ
に流れてくるわけです。

「文法をきちんと積み重ねていく」、「自分の舌の動きを観察し、鼻音
化の何たるか理解した上で体験する」このようなことなしには、長期
的な伸びは期待できないように思います。

「受講生は講師の卵」です。いずれそう遠くない将来、受講生は教える
立場に立ちます(立つことが多いはずです。ミレではそのような思いで
教えています)。きちんとした文法の説明や音変化を理解せずに教える
側に回ったときには、その方たちは苦労するだろうなと思います。

ミレを立ち上げて1年と4か月。ミレ周辺の事情が少しずつ目に入り始め
ました。
ネイティブの指導者が必ずしも上のような方ばかりだとは思いませんし
、日本語ネイティブの講師にも説明の苦手な人もいるだろうと思います。

いずれにしても、「文法の理解」と「会話の実践」、この両輪をどう両立さ
せ、「楽しく力の付く授業を継続的に実践しているか」、韓国語教室に対
する評価は受講生が厳しく下すのだということを肝に銘じたいと思います。

通信007 楽しく学ぶ学校にするためには?

【週刊ハンガンネット通信】《第7号》(2011年7月21 日発行)

「楽しく学ぶ学校にするためには?」

フェリス女学院大学オープンカレッジほか講師
阪堂千津子
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皆さん、こんにちは。ハンガンネット世話人の阪堂千津子です。
今週は配信が遅くなって、すみません。

さて、先日の三連休は、いかがお過ごしでしたか

三連休・・・といっても 講師のみなさんは
普段通りに授業をなさっていた方も多いのではないでしょうか
わたしもいつもと同じく土曜日や月曜日には授業があったので、
日曜日だけが休日でした・・・(泣)

・・・が、その貴重なお休みの日に
講師をやらせていただいている横浜の韓国語学校のOFF会に参加して、
受講生のみなさんと バーベキュー&ビール飲み放題の
楽しいひとときを過ごしました!!!

このモイムが特筆すべきなのは

・自主的な講師のよびかけに
・学校独自のSNS(ソーシャルネットワークシステム)を通して
40名超(うち5名は講師)の受講生が集まり
・クラスの敷居を超えて 受講生同士で交流ができた

・・・ことだと思います。

ひごろから「ほかのクラスの学生さんとおはなししてみたいなあ」と
思っていた私にとっては、またとないチャンスでした。
また、受講生のみなさんも、ふだんのクラスのメンバーではない
同校生とあえて、話がはずんでいたようです。
いやはや、ものすごい盛況ぶり!
私たちの周りだけ「うわんうわん」と、会場に話し声がひときわ高く響き、渦巻いていました。

名残惜しいメンバーたちは、2次会に流れていきました。
わたしは翌朝も授業があるので、早々に引き上げてしまいましたが、
まだまだみなさんは話が尽きない、という感じでしたね。

年齢も性別も住まいも職業もバラバラなのですが、
会社のように利害関係もなく、近所づきあいのようにしがらみもない、
ただ1つ、韓国語が好きだ、という理由だけのつながりですので
かえって気楽につきあえる、というところが良いみたいです

なんといっても インターネットの力はすごいですね
あったことのない方でも サイトのやりとりを通して
すっかりお友達になっていたので、
初対面という気がまったくしませんでした。

そして 自主的な「飲まない?」という声掛けから始まった
気軽な飲み会なので、本当に来たい人だけが集まるという気軽さもいいですね。

勉強をつづけていくのには、良い教師、良い教材も重要な要素だと思いますが
なんといっても「よい仲間」ではないでしょうか

実は私が「なんちゃって」で通っている英会話学校も月に1度くらい、
ミニパーティがあります。でも、ほとんど参加していません。

自分の学習態度を振り返り、授業よりもあのような場所に参加することのほうが
学習意欲を高めるのにはいいのかもしれないな、と改めて思いました。
今後は英会話学校の(飲み会)にも積極的に参加してみようと思いました。

これからも 頻繁にみんなで集まれる場所があるといいなあ、と思います。

ハンガンネットのみなさんの中にも
このような集まり(学校全体や、クラスを超えた集まり)をなさっている方はいらっしゃると思います。
楽しい企画、おもしろい企画の体験談をぜひとも伺いたら、と思います。

ハンガンネットでも このような集まりができたらいいですね ^^

通信006 私は京都生まれの在日2・5世です

【週刊ハンガンネット通信】《第6号》(2011年7月11 日発行)
私は京都生まれの在日2・5世です
林鳩順
ハンガンネット会員のみなさま!
アンニョンアセヨ~~
あれ? カナのスペルがおかしいのでは?と思われましたか?
アニョアセヨ、アンニョアセヨ、アニョハセヨ・・・・
いろんなルビがありますね。
本の出版で、今更ですがこんなことが
気になってしまいました。
発刊が決まればご案内いたします^^
私は林鳩順(イム/リム)・クスンともうします。
ハンガンネットの世話人として発足当時から名前を連ねていますが、
会員の皆様とお会いしたのは大阪でのセミナーだけだと思います。
今後、この通信に投稿するにあたって今日は簡単な自己紹介とともに、近況をお伝えしようと思います。
私は京都生まれの在日2・5世です。
1世のアボジと2世のオモニ、妹、弟の5人家族で育ちました。
小学校1年生から京都の朝鮮学校へ通い始めましたが、
それまではハングルは何も読めませんでした。
厳格なアボジのおかげで、家では日本語禁止・・・
アボジがいないときは日本語で生活していました。
なかなか想像がつかないですよね。
母語は文字からではなく、耳から覚えたことになります。
小・中・高は京都で、卒業後は朝鮮大学へ4年通い、母校で8年間教鞭をとりました。
朝鮮語(国語)、文法、漢文、作文等を教えていました。
退職後はボランティア活動とハングル講師を務め、
京都で開催された世界歴史年会議の通訳を機に、
通訳免許をとりました。
現在は同時通訳もこなすようになりましたが、始めたころは大変でしたよ。
今まで続けてこれたのは、好きなことだから、
そして失敗を恐れずにずっと続けてきたからだと思います。
韓国語の勉強も、教えることも同じですよね。
一朝一夕で上手くできるわけがありませんよね。
学生たちにに教えていた私が
20代から70代の幅広い年齢層に韓国語を教えることになって
すでにかなりの年月が経ちました。
でも、今でも初心を忘れないように気をつけています。
近況ですが、
私は7月1日に「サンシティ・アカデミー」というカルチャーセンターを
プレオープンいたしました。http://sun-ac.jp
初日の初めての授業を私が担当しました。
「韓国語のはじめかた・つづけ方」というタイトルの体験講座でした。
ちなみに受講料は90分¥1,000で。
タイトルは2005年に「アルク」の韓国語ジャーナル・スペシャルとして
発刊された本のタイトルを使いました。
私の講座も紹介されていて、ずっととってあった本です。
韓流がこんなに浸透するとは想像もできなかったころです。
さて、当日は初心者から中級者まで18名が参加されました。
新たなスタートを切った私のハングル講座には
もう数年間通い続けている上級者から入門の方までいらっしゃいます。
毎日が勉強と発見と感動の連続です。
・・・話し始めるときりがないので、次回に回しますね。
みなさん、HPご覧になってくださいね。
実は講座は韓国語だけではありませんので、
チンチャ、パッパチュッケッソヨ~~~
「ハンガンネット通信」、これからもご愛読ください。
最後まで読んでくださってありがとうございました!!
続きは8月11日に・・・・・
ハンサン コンガンハセヨ!!

通信005 韓国に最も近い玄海原発を止めましょう

 【週刊ハンガンネット通信】《第5号》(2011年7月4日発行)
「韓国に最も近い『玄海原発』を止めましょう」
池上 和芳 (いけのうえ かずよし)
先日、たまたまテレビをつけていると、福島県南相馬市の街の様子が映っていました。
その中で、市内のあるビルに入居している人が、隣の部屋
に入っていた学習塾が先日、塾を閉鎖して出て行ったという話をしていました。
福島第一原発の事故を受けて子どもたちが遠くに避難して、
生徒がいなくなり、経営できなくなったのだろうと、その人が言っていました。
大切な生徒が、1人、また1人といなくなり、経営者はさぞ、
つらかっただろうと思います。
私もまた“生徒”を集めることで生活している身ですので、
この学習塾が、決して、ひと事とは思えませんし、原発と
いうものの恐ろしさを改めて感じます。
国内の原発が今回のような大事故を起こしてもなお、
全国の原発を即刻、止めよう、という動きにならないのが、
とても歯がゆいのですが、
私は、国内の、どの原発よりも早く、佐賀県玄海(げんかい)
町にある「九州電力玄海原子力発電所」を止めて欲しいと思っています。
それはなぜかと言うと、玄海原発は、国内の原発の中で、
韓国に最も近い原発だからです。
玄海原発からの距離は、私の住む長崎市までが80km、
韓国南岸の巨済島までが150km、釜山までが170kmです。
ひとたび事故が起きて、なおかつ現場上空に、南から北
に向かう風が吹いていた場合などは、韓国に、取り返しの
つかない放射能汚染をもたらすことになるだろうと思います。
日本は韓国に対し、過去の侵略の罪について、誠意ある
償いを何もしないまま、こんにちを迎えている(と私は思う)のですが、
そういう状況に加えて、新たな“大迷惑”を隣国に及ぼす
ことがあっては、決してならないと思っています。
誠に悲しいことに玄海原発は、その1号機が、国内の原子
炉の中でも、圧力容器の老朽化が最も進んでいて、爆発
の危険性が、複数のメディアで指摘されています。
圧力容器そのものが爆発した場合、その被害は、福島の
比ではないそうです。私も心の隅で常に、玄海原発が
爆発しないことを祈りながら暮らしています。
外国語を学ぶということは、その言葉を話している人たち
を身近に感じる、ということなのだろうと思います。
日本で韓国語を学んでいる方々の多くが、その「身近に
感じる」人たちに「再び」迷惑をかけてはならない、という
思いから、玄海原発に反対する気持ちを持って欲しいと思っています。

通信004 語学学校の先生は、話さなくても良い!?

【週刊ハンガンネット通信】《第4号》(2011年6月27 日発行)
「語学学校の先生は、話さなくても良い!?」

アイケーブリッジ外語学院 代表

幡野泉(はたのいずみ)

ハンガンネットメンバーの皆さま、アンニョンハセヨ?
アイケーブリッジの幡野泉です。
交代でコラムを書かせていただくことになりました。
どうぞよろしくお願いします!

当校は東京の虎ノ門で、「シゴトの韓国語」コースという
ビジネス韓国語のクラスを中心に、通訳翻訳、字幕翻訳など
が学べるクラスから、初心者~中級者のグループレッスン、
プライベートレッスンまで、様々な形態のレッスンを実施しています。

いろんなコース、クラスがありますが、共通して
「会話中心であること、実践的であること」にポリシーを置いています。

あ、自分もそうしているよ、自分の学校もそうだよ、
と思われる方は多いと思います。しかし、毎秒、毎分毎に
行われる様々な学校の授業、現場において、本当にこれが
真の意味で実現されているでしょうか。

例えば、「生徒さんが韓国語で会話をしたがっています。
会話中心の授業をお願いします」と言われたとしましょう。
すると、「あ、会話をたくさんすればいいんだな」と思い、
先生だけがたくさん韓国語で話してしまうような授業に
なりかねません。

多くの場合、生徒の韓国語は先生の韓国語能力
(語彙力、表現力、流暢さ)に追いつかず、
「あれを話したい、これを話したい」と思っても、
それを瞬時に表現できず、ただ先生の韓国語を聞いている、
ということも起きてしまいます。

生徒が「あまり韓国語で話す時間がなかった……」
と思ったとしても、先生が「今日は会話がたくさんできた」
「生徒はずっと笑っていて反応が良かった」と
勘違いしたまま通り過ぎてしまうことがあります。
多くの日本語話者の生徒は、その不満やフラストレーションを
表現できず、自分の韓国語能力不足のせいにしたりもします。

こうならないためにはどうしたらいいか……。
語学学校の先生は、「教えてあげなきゃ」という意識を
「話させてあげなきゃ」という意識に変えるべきだと思います。

では、「話させる」ためにはどうしたら良いか……。
このコラム10回分でも足りないくらいの話になって
しまいそうなほどいろんな技術が思いつきますが、
その中で、私が最も大切にしているのは「質問」です。

目の前の生徒のレベルに合わせた語彙や文法を用いた「質問」、
その生徒の興味、嗜好を理解した上での「質問」を投げかけ続けます。

誤解を恐れず言いますが、先生は話す必要がないのです。
話してもらえばそれでいいのです。
質問、相づち、感嘆、疑問、また質問、話題の展開などなど……
それらをぐるぐる回していって、生徒に知らず知らずのうちに
韓国語を話している状況を作るのが語学教師の役割だと思います。

もちろん、「言うは易し」。私も日々悩みながら韓国語教育の
現場に立っています。普段、韓国語学校を運営しながら
気付くこと、韓国語教育の現場に立つ皆さんに是非お伝えしたい
ことなどを、これから書かせていただきたいと思います。
どうぞよろしくお願いします(^^)。

通信003 何を教えるか?

【週刊ハンガンネット通信】《第3号》(2011年6月20 日発行)
「何を教えるか?」

ミレ韓国語学院 学院長 前田真彦(まえだただひこ)

第2号に続いて、「気の合う同士でグループを作りたい」という
受講生の要望にどう答えればいいか、について僕なりの思い
を書きます。特定の誰かを想定しているのではなく、一般論と
して書きます。

まず、自分は「何を教えるのか」という意識を常に持っていない
といけないと思います。

韓国語を教えることを通して「何を教えるのか」ということです。
韓国語の発音や文法だけを教えているのではない、という意
識を常に持っておかないと、授業が深まりません。

僕の場合は、突き詰めると「異文化(他者)理解のため」「豊か
な人生を歩むため」に韓国語を教えているということになります。

「気の合う同士でグループを組みたい」という声が出たら、その
場で教師がどう対応するかで、その教室の質が決まってきます。

恐ろしいことです。こういうとっさの対応にその教師の資質が出
ます。普段から考えて鍛えておかないと、「異文化(他者)理解
のために学ぶ韓国語教室」とは反対方向に進んでしまいます。

「気の合う同士でグループを」という声が出たら、僕なら即座に、
「ミレでは、異文化理解のために韓国語を教えています。自分と
は異質なものと触れ合うことが外国語を学ぶ楽しさです。ぜひ、
今までしゃべったことのない人とグループを組んでください」と言います。

普段から「教室は間違えるところ」ということを言い続けることや、
「逆転現象」(=よくできる人が常によくできる人ではないという
場面を授業の中に意図的に演出すること)をしかけ、クラスの人
間関係をほぐしていきます。

そのために普段から様々な仕掛けをしていきます。

教室は2人集まれば集団です。集団をどう形成しコントロールして
いくか、ここに教師の力量が問われます。

韓国語の文法や、発音を教えるだけが我々の役目ではありません。

固定されたグループのある、あるいは一部の人だけが活躍する
教室、こういう集団は「異文化(他者)理解のための外国語学習」
「多様な価値観を認め合う外国語学習」の現場にはふさわしくありません。

教師が、しっかりと教室経営のポリシーを持ち、自分の担当するク
ラスをどう指導していきたいのか、自分は何を教えているのかとい
うことを常に問いかけて、自分なりの考え方を持っていると、このよ
うな受講生にも、堂々と対応でき、ぶれが生じません。