通信587 「大学初修韓国語におけるハングル導入法について①」加藤慧

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【週刊ハンガンネット通信】第587号(2026年6月29日発行)

「大学初修韓国語におけるハングル導入法について①」 加藤 慧
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先日行われた仙台韓国教育院主催の韓国語教育者シンポジウムで、『大学初修韓国語におけるハングル導入法について―英字表記とタイピング練習の併用を中心に―』というテーマで実践報告を行いました。 現代の学生のニーズ(SNSや推し活)に合わせた導入の一例として、先生方の日々の授業づくりの参考になればと思い、こちらでも数回に分けて内容を簡単に共有させていただきます。

【はじめに:多様化する学習動機と初期の壁】
近年のK-POPや韓国ドラマの流行に伴い、大学の韓国語初修クラスにおける受講動機は多様化しています。従来の資格取得や留学だけでなく、「SNSで推しの投稿を読み、自分でコメントを書きたい」といった、日常的に文化や趣味を楽しむことを目標とする学生が急増しています。

しかし、日本語を用いた間接法の指導環境下では、見慣れない「ハングル」そのものが初期の大きな心理的障壁となり、学習意欲の低下やドロップアウトを招くという課題があります。

そこで、この心理的障壁を下げ、学習の定着率を高めるための「英字表記(ローマ字)」と「タイピング」を掛け合わせた導入方法を提案します。

【日本語母語話者の心理的障壁と既存指導法の限界】
日本語母語話者にとって韓国語は、語順や助詞の使い方が極めて類似した非常に学習しやすい言語です。しかし、初学者が最初に直面するのが、日本語の文字体系とは全く異なる幾何学的な形状を持つ「ハングル」の壁です。

この障壁を回避するため、これまで以下のようなアプローチがとられてきましたが、それぞれに限界がありました。

カタカナ表記の弊害:市販の入門書でよく見られますが、音素の混同や、日本語の開音節構造に起因するパッチムへの不要な母音挿入などの弊害が生じるのは周知の通りです。

発音記号(IPA)併記の限界:大学の教科書で一般的ですが、記号(例:ɔ, ʌ, ə, ts/dz)自体が馴染み薄く、解読に余計な認知負荷がかかってしまいます。イメージに引っ張られ、不自然な発音(「야 [ja]」を「ジャ」、[tsa/dza]」を「ツァ」あるいは「ズァ」   と発音するなど)を誘発するケースも実際に散見されています。

そこで今年度から、こちらでも以前触れた英字表記を積極的に活用してみることにしました。大韓民国が2000年に告示した「国語のローマ字表記法」を採用します。

これは、現代の韓国における地名(例:Seoul、Incheon)や人名で実際に使われている「生きた表記」です。「ㅓ = eo」「ㅡ = eu」といった文字列は、K-POPアーティストの名前やSNSで学生が日常的に目にしています。実社会や学生の興味(推し活)と地続きであるため、自発的なモチベーションを引き出せるというメリットもあります。

次回はその具体的な内容について書いていきたいと思います。

(②へ続きます)